皆さんの中で白蟻業者やリフォーム会社に「床下換気扇」や「調湿材」を勧められた方はいませんか?
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点検員「土台や柱が腐ってしまう。白蟻も呼び寄せてしまいます!」
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点検員「大地震が来たら大変!」
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点検員「今すぐ床下湿気対策を!!」
このようなセールストークをされたのではないでしょうか。確かに床下の空間というのは室内に比べて一般的には高湿です。また、温度差により室内から流入した空気が冷やされて、土台などに結露が発生することがしばしば起こります。ですから状況に応じて適切な対策が必要になる場合もあります。
ただし、現実問題として消費者からの相談や苦情が最も多いのも実はこれらの商品です。
「ずいぶん高かったのにあまり効果が感じられない」
といった話が非常に多いです。もちろん原因は消費者の無知につけこんでやりたい放題の業者側にあります。大切なマイホームですから必要以上に脅かされれば無理もないですよね。ですので床下の湿気対策について、本当に知っておいて欲しいことをお話します。
「3点セット」と呼ばれる商品を同時に見積もる業者には要注意
まず、湿気「対策」と言うからには現状を良く知らなければなりません。もともと床下は湿気ていてあたり前ですから、「対策」を施す必要のあるお宅の方が少数である、と言うことを理解して下さい。悪質業者はすべてのお客様に同じ内容の見積りを出します。業界ではそれを「3点セット」と言って、「白蟻防除工事(カビ処理を加える場合もある)」、「床下換気扇」、「床下調湿材」を同時に見積りします。
さて、床下の湿気が通常より多くなる原因には下記のようなものがあります。
- 1.敷地が周りの土地に比べて低い。
- 2.地下水位が高い。
- 3.床下の土壌面が敷地よりも低い。
- 4.水田や湿地を造成した土地である。
- 5.床下空間の高さが足りない。
- 6.増築をしてある。
- 7.基礎の通気が妨げられている。
- 8.住宅の密集地で隣家との距離が接近している。
- 9.台風、洪水で床下に雨水が流入した。
- 10.配管からの水漏れや雨漏りがある。
1~4までは床下の土壌そのものが湿気を多く含んでいるケースです。5~8までは床下の通風が良くないケースです。9,10はアクシデントですが、土壌の水分が多くなります。細かく言えばもっともっとありますが、とにかくこういった原因がなければ特に大騒ぎをする必要はないのです。
「畳の表面がなんとなくジトジトしている」
「ダニに刺されて困っている」
「畳にカビが生えた」
などといった現象が全く見られない場合は、あまり気にしなくて良いと思います。また、それらの現象があっても必ずしも床下の湿気だけが原因とも限りません。 私どもでは、床下の湿気が特に高い場合を除いては、これらの商品のご提案はしておりません。
床下湿気対策商品の特徴は?
1.床下換気扇
- 床下換気扇
- 撹拌送風機
床下に滞留している湿った空気を強制的に排出し、新鮮な外気を取入れることで床下の湿度を下げるために開発された商品です。メーカーは大手総合家電メーカーから専門メーカーまで大小さまざまです。 いずれもモーターでファンを回して空気を物理的に移動させます。中にはソーラー発電で電源いらずのものもありますが、通常電気代は月100円/台ですので、絶対に元は取れません。
取り付ける換気扇の台数は、1階の床面積が30坪位までの普通の床下の家なら、機種によりますが2~4台で充分です。費用は機種やメーカーによって違いますが、取り付け工事費込みで大体10数万円から高くても30万円位までです。これを大きく上回る見積りを出された場合はご注意下さい。
また、良くある手口として取り付け後半年から1年位してアフターサービスと称して点検し、「まだ湿気があるので追加しなければだめだ」と、 さらに売り込まれてしまうことがあります。業者によっては基礎の外周部にぐるりと10台近くも取り付ける場合もありますが、はっきり言って逆効果です。
床下の空気の流れを設計することは大変に難しく、我々床下の専門家でもなかなか完璧にはいきません。基礎や通風口の形状を良く把握し、方角等も考慮し、できる限り空気のよどみが無くなるように配置します。どうしても重要な部分がよどんでしまう場合には、その場所に撹拌送風機を設置して空気を移動させます。 正しく設置し、機能し始めると畳や押入れに生えたカビなどはスーッと取れてしまいます。その効果は必ずお住いの方にも実感できるはずです。
2.床下防湿シート
防湿シートは床下に敷設し、土壌から上がってくる湿気を根本的に防止するための製品です。床下が土間コンクリートの建物では、コンクリートの下に敷設されることも多いです。厚さや素材により複数の種類がありますが、厚さ0.1mm~0.2mm、素材はポリエチレンやEVA樹脂で出来たものが主流です。
左写真がEVA樹脂系防蟻防湿シート。右写真がポリエチレン系防湿シート。
土壌からの湿気を均一に防ぐという点において抜群の効果を発揮しますが、調湿材が水漏れの跡など局所的に使用できる一方で、防湿シートはその性質上、床下全面に施工する必要があり建物の面積によって割高になってしまうことがあります。また建物の構造上全面の施工が困難な場合もあるので、事前調査の上で他の湿気対策をお勧めすることもあります。
3.床下調湿材
調湿材というのは周りの湿度が相対的に高いときに吸収し、反対に周りが乾燥してくると排出するというすぐれ物です。シリカゲルに代表されるような乾燥剤と違い、 繰り返し吸放湿を行いますので、原理的には半永久に効果があります。多孔質で比表面積の大きな素材であればそのような効果が期待できます。
現在多種多様な商品があり、材質としては以下のものがあります。
2. 【炭系 】 木炭、竹炭、セラミック炭など
3. 【その他】 混合物など
また、それぞれ直接地面に敷き込むタイプと、不織布の袋に3~4キロづつ詰めたものを敷き込むタイプがあります。費用は敷き込み代込みで大体坪当たり1万円~3万円位ですが、特殊なものもあり、かなり幅があります。
ちなみに当社では床下調湿材はほとんど販売しておりません。その理由ですが、まず床下換気扇と調湿材を併用するのはナンセンスと考えます。それぞれ床下環境改善の効能をうたっている商品なわけですから、 よほどのことが無いかぎりどちらか一方で十分なはずです。
で、どちらがよいかというと、費用の点で圧倒的に換気扇の方が安いです。おおむね、2分の1から3分の1で設置できます。両方売り付ける業者は 「相乗効果で・・・」と言うと思いますが、理屈が通りません。
また、調湿材に炭を勧める場合に有害物質の吸着作用などをあげる場合もあります。確かに多孔質の物質はホルムアルデヒドなどの有害物質をよく吸着します。 ただし、その効果は有限です。飽和状態になったら、それ以上は吸着しません。また、湿気のように吐き出されてはたまりません。
ただし、ここに書いたことはあくまで床下調湿材に対する私の見解です。別の用途で敷き込みをされる方はそれらの効果効能を良く確かめたうえで、頼んでください。 イメージや通説に左右されず、本当に良いものをその目的に合わせて適切に利用することが大切ではないでしょうか。
4.防蟻・防湿皮膜形成工法
樹脂による強固な防蟻・防湿皮膜を形成する工法です。処理層に含まれる防蟻剤が白蟻の侵入を防ぐとともに、土壌からの湿気を大幅に抑え、床下に発生する「カビ」や「腐れ」を抑制します。水性アクリル樹脂のものなどがあります。こちらは湿気対策だけでなく、防蟻剤成分が樹脂に含まれているため、同時に防蟻対策にもなります。
防蟻防湿皮膜工法については、こちらにも詳しくまとめてあります。
湿気対策とシロアリの関係
最近はシロアリ業者以外で床下換気扇や床下調湿材を売り歩く業者がいます。たしかにシロアリは湿気を好み風の流れを嫌います。そのために、たとえ湿気の多い床下でさえ 「蟻道」という特別なトンネルを造ってその中を移動します。「蟻道」の中は暗く湿度も高いうえに風も通らないので、シロアリ達は安全、快適に通行していくのです。
床下の湿度を低く保つことで、シロアリの侵入する確率を低くすることは出来ますが、「シロアリが来にくい」環境になるだけで、「シロアリが来ない」と言うことではありません。床下換気扇や調湿材は、シロアリ対策と言うよりは木材の腐朽(くされ)対策ととらえたほうが良いと思います。
最後に…
いかがでしたか? 床下の湿気対策は、その建物の床下状態によっては非常に大切な対策です。しかし実際には「今すぐに床下湿気対策を!」というほど緊急性の高いお家は、そう多くはありません。我が家に「押入れがカビている。」などの自覚症状があったとしても、その業者が提案したことが本当に正しい対策なのか、冷静になって考えてみてから我が家の床下湿気対策をどうするかを検討してみて下さい。
ご自身では判断ができないときは、信頼できる業者に再度診てもらうのも良いかもしれません。基本的には床下調査までは無料で行っている業者がほとんどです。複数の業者に調査してもらうことで、より客観的な視点で判断することも出来るようになります。
テオリアハウスクリニックでも、床下調査の際には床下の湿気状態をご報告させていただいております。床下の湿気で気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
記事:木村(テオリアハウスクリニック)